そのワイン、ヴィーガンじゃないかもしれないって本当?

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ワインの製造工程

グラスに注がれたそれは、食事の友であり、憩いであり、苦楽をともにする人生の彩りでもあるもので。ワインは、太陽をぞんぶんに浴びて育った採りたてのブドウから作られるが、あの魅惑的な液体になるまでに、主に以下の工程を経て製造される。

1 ブドウの収穫
2 圧搾(あっさく)……茎など余分な部分を取りのぞき、ブドウを潰して果汁をしぼる。
3 発酵……果皮やたねとともにタンクに入れて、糖分がアルコールに変わるように発酵させる。
4 熟成……果皮とたねを取りのぞき、液体を樽かタンクにつめて熟成させる。
5 ろ過……熟成を終えたワインをろ過し、不純物を取り除く。(省かれる場合もある)
6 瓶詰め。または樽に入れて熟成させる。

白ワインの場合には、この工程のうち圧搾と発酵の順番が逆。つまり果皮やたねを取り除いてから発酵させるため、赤ワインのように色がつかないというわけ。ピンク色が美しいロゼワインは、発酵の途中で果皮とたねを取り除く方法が一般的だという。

 

ワインに使われる動物性食品

一見すれば、これらの工程の中に動物性の原料が入るすきなど無いように思える。しかし、ワインの製造過程では、卵白、魚由来のゼラチン(アイシングラス)、乳タンパクなど、動物性の原料が伝統的に使われている。残念ながら、赤・白・ロゼを問わず、多くのワインは、厳密にはヴィーガンではないのだ。

では、何がどのように使われているのか。
ろ過の工程のひとつに、「清澄化(せいちょうか)」という作業がある。清澄化とは、フランス語ではcollage(コラージュ)、英語ではfining(ファイニング)といい、シンプルにいえば、瓶づめをする前にワインの濁りを取りのぞいて透明度を上げること。発酵を終えたワインは果実から出るペクチンやポリフェノール、渋味の成分であるタンニン、タンパク質、酵母などでにごっている。そこで、見た目をクリアにするためにこの作業を行うのだという。
ワイン大国フランスをはじめ、多くの国で採用されている方法はこう。まず、ワインに「清澄剤」を入れ、それににごり物質を吸着させる。にごり物質をまとって重くなった清澄剤は、沈殿物(=オリ)となってゆっくりと樽の底に沈んでいく。2カ月程たって完全に沈みきったら、ワインの上澄みを別の容器に移しかえる(=オリ引き)。移しかえることで清澄剤はすべて取り除かれ、美しく澄んだワインを得ることができる。

そして、この清澄剤として古来使われ続けている代表格が、卵白だ。これは卵白に含まれるアルブミンというタンパク質がタンニンと結びつきやすい性質を持っているからで、主に(高級な)赤ワインの清澄化に使用される。白ワインに多く使われるのはアイシンググラスとよばれる魚由来のゼラチンで、この他にも、地方によって動物性のゼラチンや牛乳、カゼイン(乳タンパク)、キチン(甲殻類の殻からとれる成分)などが広く使用されている。

清澄化をしないワイナリー、植物性を重視するワイナリーも

清澄化はワインの見た目をクリアにし、苦味を抑え、舌触りを滑らかにする役割を持つ。不純物が取り除かれるため品質が一定になるというメリットもある。とはいえ、清澄化をせずに瓶詰めをするワイナリーも存在する。彼らは「ヴィーガン向け」というよりはむしろ、あえてこの作業をしないことで、ブドウが持つ特性や自然な風味を残そうとするという。見た目は少し濁りがあるが、この「ノン・コラージュ」ワインの愛好家は多い。これらのワインには、ボトルに「Non collage」「Non filtre」または「Vegan」の表記がされていることも。

さらに、ワイナリーによっては植物性の清澄剤も活躍している。さらに、特にヨーロッパにおいてベジタリアン、ヴィーガン人口が増えたことや、サステイナブル消費への意識の高まりもあり、植物性の清澄剤に変えるワイナリーも増えているという。例えば、ベントナイトというモンモリロナイトを主成分とした岩石はタンパク質の吸着力に優れ、特に白ワインの清澄化に使われているし、シリカゲルや活性炭、カオリナイト(鉱物の一種)などが使われている。

Veganワイン、見分けるには?

日本を含むほとんどの国において、ワインボトルのラベルに動物由来の清澄剤を使用しているかどうかを記載することは義務付けられておらず、消費者がVeganワインを見つけるのはなかなか難しい。とはいえ、海外では近年、「Vegan」認証のラベルも普及しており、積極的にアピールする作り手も増えている。

参考:
登美の丘ワイナリー通信/SUNTRY
Is wine vegan?/PETA
『ワインの基礎知識―知りたいことが初歩から学べるハンドブック』新星出版社