月曜日は、お肉お休み
ミートフリーマンデー(Meat Free Monday)を知っていますか?
これは、元Beatlesのメンバーであるポール・マッカートニーさんが立ち上げたキャンペーンで、「環境保護のために毎週月曜日は肉を食べることを控えよう」というものです*。「ミートレスマンデー(Meatless Monday)」と言われることもありますが、地球温暖化を中心とする気候変動が世界的な問題になっているいま、このキャンペーンはEUをはじめとする世界中の国々で実践されており、色鮮やかなプラントベースの食事が、学校給食や大学の学食、社食、レストランなどで次々と取り入れられています。
畜産は化石燃料に次ぐ温室効果ガスの排出源
なぜ、環境のために肉食を控えるのでしょうか。
それは、畜産と現在進行形の温暖化が、切っても切れない陸続きになっているからです。温暖化はいま、地球がもはや自分の力では回復できないぐらいに深刻化していると指摘されていて1、その原因となる温室効果ガスの排出源の第2位が、食肉のための畜産によるものなのです。
畜産は、家畜飼料の生産から飼育、加工、流通まで、その生産過程で大量の二酸化炭素を排出します2。知られているように、温室効果ガスである二酸化炭素は、温暖化をもたらす要因の代表格。また、牛たちが毎日せっせと吐き出すゲップやおならにも温室効果ガスのメタンが含まれていて、こちらも温暖化の要因になっています。
畜産はさらに、土地や水など、多くの地球の資源を必要とします。ただでさえ、いま地球上の土地のほぼ3分の1は家畜のために使用されていると言われていますが、地球規模の人口増加で膨らむ食肉需要に追いつくため、毎年アマゾンなど多くの森林が伐採されて続けています。何年もかけて育まれた生態系が息づき、動植物が暮らしてきた場所が、家畜の飼料生産や放牧のための土地にとって変わられてしまう。生物多様性の喪失のほぼ3分の1は、畜産に関連しているといいます。
ちなみに、温室効果ガスの排出が圧倒的に多いナンバー1は化石燃料によるものですが、畜産からの排出量は、特にEUにおいて、輸送機関(飛行機や電車、車、船など)からの全排出量に匹敵するか上回るそう3。
こうしたことから、FAOをはじめとする国連機関や各国の政府も、気候変動に対する行動指針のひとつとしての菜食を推奨しています。
関連記事:畜産と温暖化の深い関係
食べられるのは野菜だけ?
とはいえ、「そうですか」と肉食をあっさり卒業することは難しいもの。それに、急に食生活を変えることは、人によっては身体のバランスを崩してしまうかもしれません。でも、週に1日なら、最初の一歩としてトライできる気がしませんか。
タンパク質はどうするの? と心配になるかもしれませんが、植物性タンパク質は豆腐や納豆など豆類に豊富に含まれていますし、それらにはビタミンB群やミネラルも多く含まれています。また、「ソイミート」と呼ばれる豆から作った「お肉」製品(ソイハンバーグやソイナゲット、ソイチーズなど)も続々と開発・販売されていて、イオン系列など身近なスーパーで手に入れることができます。水で戻してお肉と同じように使える乾燥タイプの「お豆のお肉」も比較的簡単に購入できますし、乾物なので、急いで使ってしまわないと!という心配もありません。
ちなみに、チーズ好きにとって、ヴィーガンチーズ(しかもとろける!)を探すのはちょっと難しいのです。私も、ヴィーガンチーズを求めて長い旅路をたどった一人。あるにはあるのですが、なんとなく脂っぽかったり、「チーズといえば、まぁ……」というものが多くて。そんな中で見つけたイチオシは、相模屋「BEYOND TOFU」シリーズのヴィーガンチーズ。名前の通り豆腐から作られているのですが、味もチーズ、まろやかさもバッチリ、なんといってもとろける!のが気に入って常時冷蔵庫にスタンバイさせています。
外食産業もプラントベース(菜食)分野には力を入れていて、ヴィーガンレストランでなくても、メニューにヴィーガンオプション(ヴィーガン料理)をいくつか用意しているレストランは着実に増えている印象です。ヴィーガンラーメンを出すラーメン屋さんもいくつかありますよね。
また、菜食とは程遠いイメージのファーストフードでも、例えばモスバーガーではパテもソースも全てプランドベースの「グリーンバーガー」を、バーガーキングでは「プラントベースワッパー」を、ドトールでは、大豆ミートを使用した「全粒粉サンド大豆ミート」を販売しています。
いつものコーヒーに入れる牛乳は、月曜日だけ豆乳やアーモンドミルクに変えてみてはいかがでしょう。
食べられるのは、「サラダ」だけじゃない。
菜食、プラントベース、ベジタリアン、などと聞くと、「サラダだけ食べてるの!? うさぎかよー」と思われがちですが(「うさぎか!」は、ヴィーガンがよく突っ込まれる言葉ですね。光栄ですが笑)、決してそうではありません。肉由来のものを採らなくても、おかずやソースを工夫すれば、実にさまざまな料理が楽しめます。
例えば、週に1度は、料理に使うブイヨンを、植物性のものにしてみたり、
煮物に入れるお肉をソイミートにしてみたり、
パスタのソースをトマトベースにしてみたり。
それに、地域のベジタリアンレストランに行ってみれば、きっと新たな「出会い」に驚くはずです。
がまんせず、楽しく
また、大きな声では言えませんが、「どうしても動物性のものが食べたい!」という方は、まずは卵のみは取り入れる、チーズのみは取り入れる、ということでもいいかもしれません。
「ミートフリーマンデー」の趣旨とは外れてしまいますし、動物保護の観点から菜食を実践する方々から見れば、「それは菜食とは言わないよ、けしからん!」となるかもしれませんが、喫緊の環境影響を考えるとき、一番に温室効果ガスの排出が多いのは、牛肉の生産過程によるものだからです。
菜食は、がまんして、歯を食いしばってするものではないと思うのです。私は普段、肉を食べませんが、1日、また1日、としていくと、「ふっと身体に風が通り抜けるような」爽快感と軽さを感じることがきっと(いや、絶対に)あるはずです。また、普段使いすぎている胃腸を、消化のよい菜食によって少し休めることは健康維持にも繋がりますよね。そして、菜食を始めた人からは、頭がスッキリする、そんな声を聞くことも少なくありません。そんなメリットもたくさんあるのです。週に1度でも、「大地に根を生やして生まれた食べ物だけ」をいただく。それは、体にみなぎるようなエネルギーを与えることでもあると思います。
地球の人口は増加を続け、2050年までに100億人ちかくに達すると予測されています。
しかし、人類がこのままの畜産システムを続けていけば、そのころ、人間の胃袋を支えるだけの土地は、地上に残されていないかもしれない、という指摘もあります4。
すべては最初の一歩から。地球温暖化を食い止め、地球の資源を守り、動物や植物のいのちと共存すること、そして、より健康な身体のためにも「ミートフリーマンデー」、はじめてみませんか?
1 “Climate tipping points — too risky to bet against”, nature, 27 November 2019
2″Global Livestock Environmental Assessment Model (GLEAM)”,FAO
3″EU’s farm animals ‘produce more emissions than cars and vans combined“,The Guardian, 22 Sep 2020
4″UN urges global move to meat and dairy-free diet“, The Guardian, 2 Jun 2010