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〈Veganインタビュー〉「引く」ことから始めたヴィーガン生活は、ハッピーで溢れていた。 | HUG
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〈Veganインタビュー〉「引く」ことから始めたヴィーガン生活は、ハッピーで溢れていた。

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YouTubeでヴィーガンの暮らしを発信しているヨンさんとサヤカさん夫婦。二人の地球に寄り添った生活は、どれも真似したいものばかり。ヴィーガンになったきっかけや、心身の変化などについて聞きました。(聞き手:Haru『HUG編集長』)

ヨンさん、サヤカさん

2018年にヴィーガン生活をスタート。YouTubeで日々の暮らしや食事、買い物やレジャーのことなどを発信。多彩な手料理や暮らしの工夫、明るくポジティブな二人のエネルギーが人気を集める。
YouTube「Vegan夫婦の小さなチャンネル&Love」https://www.youtube.com/@veganfufu
サヤカさんInstagram @sayakatori

ヨンさんとサヤカさんのYouTubeチャンネル「Vegan夫婦の小さなチャンネル&Love」
(写真はすべてヨンさんサヤカさん提供)

足すのではなく引く

——ヴィーガン生活を始めたきっかけを教えてください。

ヨンさん きっかけは僕のアトピーです。幼少期から付き合ってきたのですが、大人になるにつれてどんどんひどくなっていって。当時は薬も効かなくなってきて、夜も眠れないし仕事もつらいし。なんとか改善させたくて、もっといい先生に診てもらおう、もっと強い薬を出してもらおうと、とにかく何かを「プラス」することばかり考えていました。

 でもあるときふと、マイナスで考えてみようかと思って。「足す」のではなく「引く」。そして、試しに薬を減らしてみよう、通院の回数を減らしてみよう、と。ヴィーガンもその一環です。ヴィーガンという言葉も知らなかったけど、雑誌か何かで目にして、「へー、お肉を食べないんだ、やってみたい!」という感じ。お肉が僕のアトピーの原因かどうかはわからないけど、すがるような気持ちでした。 

 ちょうどその日の晩御飯が、ステーキだったんですね(笑)。サヤカに「明日からヴィーガンやってみたいんだけど」って言ったら、「あ、いいよー!」って。五年前のことです。

サヤカさん さっそく次の日の朝食から始めたよね。 

——抵抗はなかったのですか?

サヤカさん まったくなかったです。ヨンちゃんからヴィーガンっていう人たちがいるんだよって聞いて、なにそれ楽しそう! って。自分が今まで知らなかった世界に明日から挑戦するんだと思ったらわくわくして。楽しみだな、何作ろう! みたいな。

——動画では趣向を凝らしたさまざまなヴィーガン料理が登場します。初めはどんな料理を作ったのですか?

サヤカさん 当時はヴィーガン向けの製品や大豆ミートなども一般的ではなかったので、うどんとかパスタとか、そういう身近な料理を、動物性食品を使わないで作ってみることから始めました。手探りですが、メニューを考えたり、いろんな調味料を探したり試したりしながら。

ヨンさん 実は、最初は3カ月だけのお試しのつもりだったんです。結果、アトピーが治ったわけではないけど、改善はありました。それで、お試しどころかもう何年も続いています。

ハワイで。「手付かずの自然の生命力に触れることで、いつも気付きがあるんです」と、ヨンさん。

心地よい軽さ

——ヴィーガン生活をはじめて心身の変化などはありましたか?

サヤカさん とにかく身体が心地よくなりました。ある時、「あ、これだ!」という感覚がストンと自分の中に入ってきて。身体と心が繋がっていることを強く感じるようにもなりました。心身が軽やかになるといろんなことを考えられるようになって、自分たちのことも、栄養のことも、地球のことも動物のこともきちんと向き合って考えてみるということが増えました。心にスペースができたからか、イライラもしなくなった気がします。

ヨンさん そうだね、軽くなったよね。あと僕は、罪悪感がなくなった。それまでは、牛や豚が動物としてかわいいのも知ってるけど、一方でおいしいということも知っていたから、どこかで自分に目をつぶってきたんでしょうね。その生活がなくなった。

サヤカさん 私も、意識していたわけではないけど、以前は商品としてのお肉と動物が、なんとなく別物という感じだったんです。だけど、この生活を始めてそれがきちんと繋がった。そしたらなんだか心が落ち着いて。それはなんでだろうと考えたら、やっぱり子どもの時からどこかで引っかかりみたいなものがあったのかもしれない。どうしてお肉は食べていいんだろう。動物なのに、みたいな。

——人間は殺しちゃダメだけど動物はいい。どうして? という。みんな一度は子どものころに考えるんじゃないかな。でも答えってなくて。

サヤカさん そう。あと、なんとなく感じるのは、お肉にされる動物って、血を流して、痛いよ、怖いよという気持ちをもって殺される。だから、命を絶たれたお肉を自分の身体に取り入むということは、そういう痛みや悲しみや怒りのエネルギーも一緒に身体に入れるってことなんじゃないかと思うんです。それがなくなったことも、気持ちが軽くなった要因かもしれません。

——すごく共感します。心身が軽くなった、頭がスッキリしたというのは「ヴィーガンあるある」かもしれないけど、そういうことも関係しているのかなと。

知り、選ぶこと

ヨンさん あと、そのお試し期間がきっかけで、なんというか二人とも扉が開いちゃって(笑)。

——扉!?

ヨンさん そう、すごかったですよ、あの当時の二人(笑)。ヴィーガン生活を始めると同時に、二人とも、とにかく勉強しまくったんです。お肉のこともそうだし、動物のこと、地球環境のこと、海の汚染のこと、エネルギーのこと、とにかくいろんな情報を集めて、仕事から帰宅すると「こんな記事があったよ!」「こんなことがあるらしいよ!」と報告し合って。知らなかった世界も、ショックな現実も、全部が一気に自分たちの中に入ってきた感じ。でも、知らなさすぎて面白いというか、調べるのが止まらない。「引く」とか言いながら、情報は入れまくっていました(笑)。お肉を食べないことをきっかけに、地球で起きているいろんな問題と自分たちの暮らしが繋がっていったというか。それですぐに家の電気もパワーシフトして。洗剤なんかも全部変えたりね。

サヤカさん お金の使い方も変わったよね。

ヨンさん 買い物は応援だなと思ったり。同じ時期にヴィーガンのお店や有機農業をしている人の記事なんかも読んだことで、この暮らしに対するトキメキも生まれたんです。そしたら買い物の価値観も変わった。こういうところになら、ちょっと高くてもお金を使いたいよね! とか。

——先ほどヨンさんから、足すのではなく引いてみたという話がありました。これって、現代社会を生きる上ですごく大切なヒントだと思ったんです。モノも情報も選択肢が溢れかえるこの社会では、私たちは毎日あらゆる場面で「足す」ことに誘導されがちですよね。でも、どんどん足していって満足するかというとそうでもなくて。逆に自分が持っているものに対して無頓着になるというか、大切なものをいまいち探しきれない感覚。「溢れる」社会でどう心地よく生きるか。「引く」思考や行動って、大きなことで言えば地球のムダ使いを止めること、個人レベルでは心身のバランスを保つ上でも大切な気がします。
 とは言え、こと情報においては、知ることで「引く」ことができるというか……。情報の選択って難しいですよね。

サヤカさん 実は私は、いろいろ調べている期間に気候変動とか今の地球の状態を知って、「あ、地球が終わっちゃうんだな」って思ったんです。これは私達にどうにかできるものなのかなぁって。牛や豚が工場に運ばれていく場面を見たときはすごく悲しくて。でも、悲しみと罪悪感に飲み込まれなかったんです。これって、私がまだお肉を食べている状態で見ていたら、「私ってなんて悪い人間なんだろう」と思ってつらくなってしまっていたかもしれない。でもその時の私はすでにヴィーガン生活を始めていたから。「悲しい。けど、今の私はお肉食べてないから! OK!」と思うことができた。たまたまヴィーガン生活が先だったから、いつの間にか情報を受け入れる準備ができていたのかもしれないです。

 それに私は、自分の考えを大切にしていて、記事や本を読んでも自分の都合のいいように考えられるタイプ。だから、自分の中で情報の取捨選択ができたのかも。

ハワイのオーガニックファームでのサヤカさん。大きな可愛いバナナの木と一緒に。

楽しいを伝える

——お二人のYouTubeをみていると、自分ごととして地球や環境のことを考えているのがわかるし、そのための工夫を生活や遊びに丁寧に取り入れられているのが伝わります。でも決して押し付けがましいとか、お勉強的とかじゃない。

ヨンさん もちろん、悲惨な写真とかを見て、悲しみをきっかけに社会を変えていくっていうのも僕は全然否定しないんです。場合によっては、ヴィーガンになる一番の近道かもしれない。だけど自分たちはたまたま興味から入ったので、こんな選択もあるよということを、自分たちらしく明るく、みんなにも伝えたいと思いました。

サヤカさん そう。地球、終わるのかもと思ったけど、すぐに、こんなにハッピーで最高な私たちの生活が、もしかしたら地球を守れるかもしれない! と思った。だから、こんな楽しい暮らし方もあるよ! ということをただ純粋に伝えたくて。

 いま地球は悲鳴をあげている状態かもしれない。だけど、自分の本質をワクワクさせたりときめかせたり。そういう一人一人の心からのポジティブな感情は、この地球が感じとると思うんです。地球はきっと私たちのワクワクと共鳴して、どんどん生き返るんじゃないかな。それが地球を守ることに繋がるのかなって。

——すてき! 足元からポジティブなエネルギーを地球に還元していく感じですね。YouTubeを始めてうれしかったこと、逆に驚いたことなどはありますか?

サヤカさん 私たちのことを大好き!と伝えてくれる人がたくさん増えました。「明日から牛乳をやめてみようと思います」とか「二人のYouTubeを見てヴィーガン生活を始めました」というメッセージもいただきます。私達をきっかけにヴィーガンを始めたという人たちに実際に会うと、みんな楽しそうでハッピー。それもうれしい。

ヨンさん そうだね。本当にみんな明るいよね。意外だったことは、質問を募集すると圧倒的に多いのがお金のこと。ヴィーガンの食費は高いイメージがあるのか、「うちは家計的にできません」とか「家計は大丈夫ですか?」とか。実際のところ、うちは動物性食品を買わない分のお金を調味料などに使っています。なので出費は以前と変わっていません。ヴィーガンというとイメージがちょっと「上」にあるんだなと感じました。

 あとは、初めてコメントで「ディスられる」経験もしましたね。宗教だとか、ファッションヴィーガンなんだろうとか。でも、あ、そうやって思う人もいるんだなというのも学びでした。

人との距離

——大変なことはありましたか?

サヤカさん ないです(笑)。私があまりに楽しそうだったからか、友人も実家の家族もポジティブに捉えてくれて。うちの両親は昔から、子どもに対して自分の気持ちを大切に生活していけばいいよ、自分の心地よさは自分のものだからねという育て方。あなたがやりたいならいいよって感じでした。

ヨンさん そうだね。「今週末ヴィーガンのテレビやるらしいよ」とか教えてくれたりね。僕たちが大好きなハワイで一緒にヴィーガンレストランに行ったり。

 不思議と二人とも、お肉を食べたくなるとか、そういう大変さはありませんでした。むしろ、もっと自分の身体で実験してみたいという感じ。だけど、僕の場合は親とのコミュニケーションが大変だったかな。特にヴィーガンになりたてのころは家族にも強く勧めて、父親と言い合いになったり。「それは食べちゃ駄目だよ」「豆乳にしなよ」とか。家族には長生きしてほしいから伝えているつもりが、父親からすれば、急に息子が頭おかしくなった! みたいな(笑)。当時はまだ柔軟じゃなくて、カチコチでした。

サヤカさん ハード系だったね(笑)

ヨンさん 受け入れてもらえない自分と、なんとかして伝えたい自分とのせめぎ合い。

サヤカさん でもそれって愛なんだよね。で、お父さんもお母さんも愛なんだよ。みんな自分で、自分の感覚で自分の本当を選ぶしかなくて、これが「私の本当」だったら本当だもんね。

ヨンさん そうだね。サヤカのおかげもあって、今は、おいしいと思って気持ちよく食べるならそれでいいと思えるようになりました。お呼ばれや外食に行っても、出していただいたものはありがたくいただきます。どの局面でも楽しめるようになりましたね。

 でも正直、例えば、誰かのお宅にお呼ばれして、料理に悪気なく海産物が入っていたとしますよね。「ごめんね、エビが入っているけど大丈夫?」と聞かれたら、いまの僕は「大丈夫だよ、喜んで食べるよ!」って言います。その場の楽しい雰囲気を壊さず純粋に楽しみたい。でも近い将来、「お肉やエビが入ってないけど大丈夫?」と普通に聞かれるような、そんな世界がくればいいなと思っています。

※次回は、お二人の食材の選び方や、地球との付き合い方などについて紹介します。お楽しみに!

編集者、デザイナー、時々翻訳。一般社団法人日本ヴィーガニズム協会代表理事。『HUG』編集長。新聞社と出版社で14年働いたのちフリーランス。
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